病窓から
朝、感動を受けた。 目を覚ましぼんやりと病窓に目を遣ると、窓から見える西の空が朝陽を受けて色づいていた。グレイ調に沈んでいるんだが、そのグレイの諧調の美しかったこと。山の端に水平に掃かれた様に長く延びる朱の雲、朱の上端は光り輝いていた。その上に分厚い濃グレイの雲、暗く大きな雲だが微妙な赤味と紫味を含んでいる。その上に淡いスカイブルーの青空が、そのまた上の暗い分厚い雲との隙間から覗いていて可憐。上天には陽光を浴びた白い雲の波。暫し病窓から見える空の絵画に見惚れていた。絵は見る見るうちに変化した。そのうち空は一面白光の空に移行した。僕はカメラを持参しなかったことを後悔した。東の空はどれだけ綺麗なことか、感動中にチラッと思ったがベッドから動かなかった。入院患者らしくしていた。病院でなければ味わえない感動、それに遭遇できた。僕は思う、地獄にも感動はきっとある、天国・極楽にも失望は多分ある。感動する心があれば、人間、何処でもどのようにでも生きられる。
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