最初に十一面観音像・重文を訪ねたのが「医王寺」。木之本市街を東に抜けて北上した、高時川の上流の奥深い谷間にある。寺は無住。拝観者用の連絡先が三軒書いてあるが、吾輩には何せ携帯電話がない。近所の「大見いこいの森公園」レストハウスに公衆電話があると書いてあるので寄ってみた。公衆電話は見当たらなかったが、若い勤番の男性が受付窓を開いて用件を聞いてくれた。そして慣れた様子で事務所から当番の村人に電話して頼んでくれた。どうも雲行きはたらい回しにあっているよう。それでも若い人は根気よく頼み倒してくれた。奥山の山里まで訪ねてきた旅人のために熱心さを発揮してくれた彼に感謝するしかない。 寺の観音堂の横で待っていると、大分経ってからおじいさんが自転車に乗って来て「予約して来てくれないと困る」と二度ほどぼやく。それでも観音堂の鍵を開けて拝観させてくれた。記帳を求め、石油ストーブに火を点けてからガイドテープを回す。たった一人の拝観というのが非効率的でお気の毒様というのは好く分る。吾輩はこういう時には気を使って数人分の散財をする材料がないか辺りを見回す。意外にも写真が三種置いてあった、素人の手作りだが。
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