2012年9月28日金曜日

◇夏目漱石「明暗」を読んで。

最近漱石の「明暗」を読んだ。文庫本で670P程の大冊で読了に日にちを要したが、途中から面白くなって苦も無く読めた。大正5年朝日新聞連載小説。漱石が連載途中で病没して絶筆となり未完成作品として残った。漱石の書いた最長編の小説。
主人公・津田由雄の性格ははっきりしない。漱石はわざとそのように性格設定して書いている。対照的に、新妻・お延、妹・お秀、由雄を一年前に捨てて関と結婚した清子らの性格は鮮明で、由雄の優柔不断が浮き上がる。三人の女の性格・心理・言動の描写は、漱石の天才的眼力・筆力をもってして初めて好く成し得るところで、それを味わえるだけでも大層な値打ちもの。清子が流産して静養中の温泉旅館で由雄と再会したところで物語は断末となる。この後物語がどう展開して終結するかをお節介にも明暗の続編として小説化した作家もいるという・どうしても未完のままでは済まされない・作者の死後も独り歩きする力を秘めた未完作品。
水村 『続明暗』 筑摩書房、19909月。漱石の文体をそのまま模し、未完となった『明暗』のその後を描く。芸術選奨新人賞受賞作。←この作品は取り寄せて是非読もう。他にも「明暗」のその後について執筆している人が幾人かいる。

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