2013年5月29日水曜日

〇辻邦生「西行花伝」をとうとう読了した。

西行の歌と生涯にいつしか心惹かれていた。そんな心の前に、辻邦生の「西行花伝」が読むべき本として出現したのは極自然だった。だが購入はしたが、長く積読(つんどく)状態にあった。それに手を伸べた初めは、ボクが旅に出始めた頃だった。そのときは、始めの数帖を読んで投げ出した。それはボクの想定した小説ではなく、敢えて言えば研究論文の集積のような読み難いモノだった。当時は感覚が合わなかった。その後の旅で、不思議なことにボクは西行の足跡を、意図した訳ではないのに結果として辿っていた。紀ノ川、京都嵯峨野・西山、吉野山、高野山、讃岐国白峯陵・四国遍路、伊勢、鎌倉、白河関、平泉、比叡山、葛城山麓弘川寺‥‥そしてまた最近「西行花伝」を手にしてみた。始めの数帖の取っ付きの悪さは相変わらずだったが辛抱して読み進んだ。何とか読み進むことができた。そのうち調子が出て読了に漕ぎ着けた。新潮社文庫本・775P、また視力を悪くした。いつか・西行の全足跡を辿った写真集を編もう。保元・平治の乱、源平争乱の只中を生き、鎌倉幕府による革命を見た西行の生涯は劇的。「願わくは 花の下にて春死なん その如月の望月のころ」と詠んでその通りの時季に死を迎えた西行の人生はあり得ないほどに美しい。

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