2015年4月9日木曜日

〇芭蕉「奥の細道紀行」北陸路(39) 敦賀半島・歌枕「色が浜」《寂しさや須磨にかちたる濱の秋》《衣着て小貝拾わんいろの月》

〇奥の細道《十六日、空晴たれば、ますほの小貝ひろはんと、種(いろ)の浜に舟を走(は)す。海上七里あり。天屋何某と云ふもの、破籠(わりご、内部を仕切った白木の弁当箱)・小竹筒(ささえ、携帯用に竹で作った酒入れ)など、こまやかにしたゝめさせ、僕(しもべ)あまた舟にとりのせて、追風時のまに吹き着きぬ。浜はわづかなる海士の小家にて、侘しき法花寺(ほっけてら)あり。爰(ここ)に茶を飲み、酒をあたゝめて、夕ぐれのさびしさ感に堪へたり。
寂しさや須磨にかちたる浜の秋
浪の間や小貝にまじる萩の塵
其の日のあらまし、等栽(とうさい)に筆をとらせて寺に残す。
↓敦賀火力発電所の煙突が見える。右側に敦賀市街が見える。ここから天屋何某の仕立てた舟で敦賀湾を北上し色が浜を目指した。ここは、敦賀・色が浜間の半ば。
↓色が浜
↓沖に砂州があり松が生えている。


↓侘びしき法華寺・本隆寺。


↓句碑
衣着て小貝拾わんいろの月 芭蕉》
↓「芭蕉翁杖跡」の碑
↓《小萩ちれますほの小貝小盃 桃青》
↓本隆寺・開山堂


句碑・歌碑
↓寂塚 《寂しさや須磨にかちたる濱の秋


↓歌枕。《潮染むるますほの小貝拾ふとて 色の濱とは言ふにやあるらん  圓位》
圓位(えんに)とは、西行上人のこと。「ますほの小貝ひろはんと、種(いろ)の浜に舟を走(は)す」という行動の原動力になったのは、この西行の歌への憧れ。


「等栽に筆をとらせて寺に残した其の日のあらまし」は、本隆寺に今も秘蔵されているそう。そのあらましとは、
「気比の海のけしきにめで いろの浜の色に移りて ますほの小貝とよミ侍りしは 西上人の形見成りけらし されば所の小ハらハ(童)までその名を伝へて 汐のまをあさり風雅の人の心をなぐさむ 下官(やつがれ)年比(としごろ)思ひ渡りし 此のたび武江 芭蕉桃青巡国の序 このはまにまうで侍る 同じ舟にさそはれて小貝を拾ひ袂につゝミ 盃にうち入れなんどして 彼上人のむかしをもてはやす事になむ  越前ふくゐ 洞哉書」

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