『(月山山頂より)‥‥湯殿に下る。
谷の傍らに鍛冶小屋と云ふ有り。此の国の鍛冶、霊水を撰びて、爰(ここ)に潔斎して劒(つるぎ)を打ち、終(つい)に月山と銘を切つて世に賞せらる。彼の龍泉(りょうせん)に剣を淬(にらぐ、焼きを入れる)とかや。干将(かんしょう)・莫耶(ばくや)(中國周末の名工夫妻)のむかしをしたふ。道に堪能(かんのう、一芸に深く通じること)の執(しふ、執心)あさからぬ事しられたり。岩に腰かけてしばしやすらふほど、三尺ばかりなる桜の、つぼみ半ばひらけるあり。ふり積む雪の下に埋(うずもれ)て、春を忘れぬ遅ざくらの花の心わりなし。炎天の梅花、、爰にかほるがごとし。行尊僧正の歌の哀れも、爰に思ひ出でて(もろともにあはれと思へ山ざくら花より外に知る人もなし)、猶まさりて覚ゆ。惣而(そうじて)此の山中の微細、行者の法式として他言する事を禁ず。仍(より)て筆をとゞめて記さず。坊に帰れば、阿闍梨の需(もとめ)に依りて、三山順礼の句々、短冊(たんじゃく)に書く。
涼しさやほの三か月の羽黒山
雲の峯幾つ崩て月の山
語られぬ湯殿にぬらす袂かな
湯殿山銭ふむ道の泪かな 曾良 』
〇以下の写真はこの「日本の神社・出羽三山」出自。
↓以下四枚の写真については、その後に説明図がついている。①大鳥居
②玉姫稲荷神社
③姥権現
④大滝神社
↑「過去の月山、現世の羽黒山、そして未来を象徴する湯殿山、三山の御神体を巡拝することで生きたまま悟りを得られると考える「御神体巡拝」。羽黒山から入り、続いて主峰の月山で死と転生の修行を行い、湯殿山で再び再生する。かつては湯殿山を「総奥の院」と称し、最も大切な山とみなしていた修行者は故郷で葬送の儀式を済ませ、死者を意味する白衣を身に着け出羽三山を目指す。まず羽黒山山麓の宿坊で一夜泊る(一の宿)。ここが現在であり、次の月山山中で二泊目を迎え(二の宿)、死後の世界へと移る。そして最後、湯殿山で三泊目を過ごし(三の宿)、未来へと転生する。再び生まれ変わることを体験し、「結縁入峰(けちえんにゅうぶ)」が成就する。」
↓「湯殿山麓の寺院・大日坊に眠る、真如海上人即身仏」
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