悲劇の主人公に相応しい愁いを含んだ知性的な顔写真として吾輩の心から消えない写真の一つ。
この女性、決して一般に知られていない。それは不運不遇だったから。しかしその業績は太陽のように光り輝くものだった。X線結晶学に生涯を捧げた。ワトソン&クリックによるDNAの二重らせん構造の発見は、彼女のX線解析データの盗み見による。解析データは、DNA結晶が二重らせん構造をとっていることを明晰に示していた。ワトソン&クリックはこの発見の業績でノーベル医学生理学賞を受けることになったが、彼女はその4年前に37歳の若さで癌で死亡していた。癌を発病したのはX線を浴び過ぎたせいと言われている。死をも恐れず取り組んだ研究の成果を窃用されたことも多分知らずに彼女は逝った。悲劇的。この顔写真を見る度に、”ロザリンド・フランクリン”の愁い勝ちな知性的な面差しに、彼女の悲劇的な物語が重なって強く心を揺す振られる。
↓田中愛弓さん。この人は、病院・副院長に恨みを抱く男の凶刃の巻き添えにされて命を落とした。当時、39歳の看護師長。何故この人が命を奪われねばならなかったのか‥その理不尽さが、この新聞写真でそのまっとうで美しい顔をを見る度にひしひしと伝わって来る。悲劇と本来無縁の人の身に降りかかる理不尽、それこそが本当の悲劇であることをこの人の顔写真は明かしている。吾輩の心に張り付いて消えることのない美しく哀しい顔写真の一つ。
〇続く
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