2013年6月5日水曜日

〇山本周五郎「おさん」を読んだ。

山本周五郎全集・文庫本が書棚に並んでいる。並べてから35年は経つ。なかなか膨大な全集。最近その中の一冊を手に取った。「おさん」。7、8篇の短編が収録されている。読後感が好い。現代の作家にこういう感じの小説を書く人はいない。人情味溢れる・ほのぼのとした温もりを感ずる作品。文章・文体は柔らかくて流麗。ソフト・パステルで描いた世界を感じさせる。ひと昔前、こういう感じの小説は「大衆文学」というレッテルを貼られてちょっと低級に見られていた。お高く止まっていたのは「純文学」作家と自称する一群とそれを持ち揚げる評論家。「純文学」などというキザな言葉は今じゃ死語じゃないか。山本周五郎の作品は独自の美しい世界を切り開いていて他の追随を許さない。独特の格調高い文学だ。

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